カサゴ|静かな狩人

Sebastiscus marmoratus (Cuvier, 1829)

概要

Sebastiscus marmoratus (Cuvier, 1829)

撮影地: 静岡県伊東市 沼津市

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > カサゴ目 > メバル科 > カサゴ属 > カサゴ

北海道以南、シナ海

特徴・雑学

【模様と名前の由来】
カサゴは単独で縄張りをもち、主に岩陰や隙間に潜んで暮らす魚です。 体色合いは変化に富み、より深い水深に棲む個体ほど赤みが強くなると言われています。

体の模様については、かつて美しいとは思われていなかったようです。
カサゴの名前の由来は「笠子(かさご)」が通説ですが、肌の腫れ物を意味する「瘡子(かさご)」に由来するという説があります。 また、三浦半島では「ツラアラワズ(面洗わず)」や「ツユアラワズ(ちっとも洗わない)」などと呼ばれており、 いずれにしろ模様に対する印象はあまり良くなかったことがうかがえます(*1)。

【捕食や特性】
海中では、岩場に溶け込むようにじっと動かず、獲物が近づくのを待ち構えています。
目は頭部の上方にあり、広い視野を確保しています。近づいてきた小魚や甲殻類を、大きな口で一気に吸い込みます。

歯は内側に向いた小さな歯が帯状に並んでおり、喰いちぎるというより、「一度口に入れたら逃げられない」ような構造になっています。
胃の内容物の調査から、主に夜行性で、甲殻類を中心に捕食していると考えられています。
また、胸鰭を器用に使って岩場に踏ん張る姿は、まるでロッククライマーのようです。

【繁殖行動】
胎生の魚で、秋に交尾を行い、翌春に3.5~4.5ミリの仔魚が生まれます。1回の産仔で5千~3万尾を産むとされ、1尾のメスは1シーズンで3~4回産仔します(*2*3)。
交尾は夕方に、メスにオスが体を巻き付けるようにして行われます。産仔(出産)は、夕方から深夜の時間帯に行われます。
水深6メートル未満に棲息する浅瀬のメスは、それよりも深い場所へ移動し、水深6メートルから8メートルに棲息する雌はその場所で産卵します(*4)。 これは、潮流のある場所で出産することで、稚魚をより遠くへ拡散しようとする行動だと考えられています。

【カサゴの立ち泳ぎ】
立ち泳ぎをする姿が稀に観察されますが詳細は不明です。縄張り誇示や威嚇、見張り。もしくは病気の可能性も考えられます。

関連動画:カサゴの立ち泳ぎ



【地方名】
アラカブ(沖縄県八重山)*E。アラカブ(長崎県平戸市)*A。カラコ(山口県下関市)*B。ボッカ(鳥取県)*F。ガシラ、ガガネ、ガブ(徳島県)*D。 ガシラ(大阪)*K。ガシラ(和歌山県西牟婁郡白浜町)*C。アナカサゴ・ホンカサゴ(東京都伊豆大島、新島)*I。アガゲ・アコウ・ネヨ(茨木県大洗、川尻、那珂湊)*H。 ハヂメ・アカハヂメ(山形県温海、鶴岡、遊佐)*G。ガサ・ガシャ・ガヤ(青森県鰺ヶ沢、浅虫、小湊・青森)*J。

食・利用

カサゴは食用魚として広く知られ、刺身や煮付け、丸ごと唐揚げにして頭からかぶりつくなど、さまざまな料理で楽しまれています。
白身でクセがなく、漁港周辺の定食店や家庭料理でも親しまれている魚です。

獲物を飲み込むための咽頭部の筋肉が発達しており、その部位が特に美味しいとされるため、カサゴの頭を落として調理するのは「もったいない」とも言われます。 また、一般的な釣りの対象魚としても人気があり、初心者にも扱いやすい魚です。

毒・危険性

オニカサゴやミノカサゴと違い、カサゴ(Sebastiscus marmoratus)に毒は無いとされてきましたが、背鰭・臀鰭・腹鰭の棘には溝があり毒腺が通っています(*5)。 カサゴに関しては毒は微弱だと考えられていますが、種類によっては強い痛みや腫れが起こります。 場合によってはしびれを伴うこともあり、重症化する場合もあるので注意が必要です。

カサゴ類の毒はタンパク毒であり、40〜50度程度の熱めのお湯(やけどしない温度)に患部を浸すことで痛みが緩和されます。
浸す時間は60〜90分程度が目安で、痛みが和らぐまで続けると効果的です。
この処置により、痛みの軽減とともに血管の収縮を防ぐ効果もあります。

関連動画:ミノカサゴ・美しい毒の鰭

参考資料

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