アカエソ|激しい捕食バトル

Synodus ulae

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概要

アカエソ・Synodus ulae Schultz 1953

撮影地: 静岡県伊東市 水深5m

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > ヒメ目 > エソ科 > アカエソ属 > アカエソ

南日本、伊豆諸島、小笠原諸島、琉球列島

特徴・雑学

普段は泳ぎ回ることが無く海底でじっとしていますが、獲物を捕らえる時は俊敏なハンターです。
アカエソの狩は一般的に、「一撃必殺の狩」というイメージですが、映像のアカエソは水面近くまで上昇しています。 ヒラヒラと華麗にかわすツノダシを高速で追いかけ、何度もターンして果敢に捕食しようとする様子が捉えられています。

こうした、目の前の獲物だけで襲うのではなく「必要であれば水面付近まで上昇して狩りをする」という"変化、適応"行動は「行動可塑性」と呼ばれます。 エソ類の研究では、海底の生物だけでなく、中層を泳ぐマアジやウルメイワシを捕食していることが確認されています。*1
行動可塑性は全ての個体に一定して備わっているわけではなく、経験や学習によって積み重ねられるものであり個体によって変化します。

参考映像:オキエソの捕食

食・利用

エソの仲間は水っぽく淡泊な肉質で小骨が非常に多いために、家庭での食用には不向きとされ、未加工の状態で流通することはありません。 その一方、エソ類は日本各地で古くから食用とされ、特に「すり身魚」として重要な地位を占めてきました。*2
江戸時代の本草学書『大和本草』(貝原益軒, 1709)*3 にも「生臭みがあり、上等な魚とはいえない。病人には食用をすすめられない。 しかし、その肉をすりつぶしてカマボコにすると美味である。」と記され、古くから加工して利用する上品な白身魚として認識されていたことがわかります。

細く柔らかい骨を多く含むため刺身などの生食にはあまり向かず、すり潰して加工することで真価を発揮する魚です。 日本各地の伝統的な練り物――例えば九州の「さつま揚げ」、山口の「蒲鉾(かまぼこ)」、愛媛や広島の「じゃこ天」などはいずれもエソ類を主原料の一つとしています。*4*5*6
現代でも漁獲地の周辺では、エソを「ネリミ」「ネリゴ」などと呼び、地場加工のすり身や魚肉団子、つみれ汁、揚げ天などに広く利用され、 「エソは蒲鉾の原料の中でも最高級」*7*8 とされています。
【地方名(地域)】*アカエソ以外のエソ科を含む
ヨソべ・タイコノバイ・オトコボラ(石川)*9、セエソ・セヨソ・セギス・ドンコ・ヨソ・オンノチュンバソ・フリイユ・イスイ(鹿児島)*10、 バカエソ(富山)、イモエソ(大阪)、トゥイーブ(沖縄)*11

毒・危険性

有毒腺や毒棘はありません。

参考資料

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