アヤメエビス|模様の戦略

Gymnothorax kidako

概要

撮影地: 静岡県沼津市 水深12メートル

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > キンメダイ目 > イットウダイ科 > イットウダイ属 > アヤメエビス

本州中部以南、西・中部太平洋、インド洋、紅海、地中海

特徴・雑学

アヤメエビスは、紅白のストライプが特徴的なイットウダイ科の中でも、ひときわ目立つ紅白のストライプです。腹ビレや尻ビレ、尾ビレにもストライプがあります。
鰓蓋の上方(主鰓蓋骨)に後方へ伸びる2本の棘があり、鰓蓋の下方(前鰓蓋骨)には大きな棘が1本あります。 鰓蓋を少し開けて捻るような行動をしましたが、捕食されそうになった際に体を捻ると、捕食者の口に刺さって襲うのを諦めさせる効果があるでしょう。

紅白のストライプで目立ちたい訳ではありません。太陽の光が降り注ぐ陸上では紅白ですが、海中では赤の光は深いほど減衰して黒くなります。 白の部分はキラキラと輝いて見えることはありません。映像では照明を当てているので紅白に見えているだけです。
夜行性のアヤメエビスは、昼間は大きな岩の下などの暗がりで過ごし、夜になると外に出て活発に活動でします。 水深のある海中の、さらに暗がりで過ごしているので、鮮やかな「紅白の魚」に見えることは無いでしょう。
また、コントラストのはっきりした模様は「Disruptive Coloration」(分断色・破壊的体色)と呼ばれ、捕食者に自分の輪郭をわかりにくくする効果があるとされます。
捕食者に認識されなければ好都合ですが、一瞬でも「ん?なんだ?」と考える隙を与えるだけでも、その間に逃げることができるでしょう。
コントラストのはっきりしたDisruptive Colorationを持つ魚は、海底に近い場所で生活する魚に多いのが特徴です。夜間にだけ縞模様になる魚もいます。

参考動画:「アオヤガラ・夜の縞模様」


参考動画:「イットウダイ」

食・利用

アヤメエビスは美味しい魚として定評があります。ただし、まとまって漁獲できる魚ではないので、市場に出ることは稀です。 多い時で数十尾が、ひとつの網で漁獲される」程度なので、地魚として地域で消費されるにとどまっていると思われます。
エビスダイをはじめ、イットウダイ科の魚は鱗が大きくて硬く「ヨロイダイ」と呼ばれるようです。「美味しいけど処理が大変」という評判を聞きます。

参考資料

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