カンパチ稚魚|流れ藻の子ども達

Seriola dumerili (Risso, 1810)

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概要

カンパチ・Seriola dumerili (Risso, 1810)

*もしくはヒレナガカンパチ稚魚

撮影地: 静岡県伊東市 水深1m(10月)

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > アジ科 > ブリ属 > カンパチ

世界の熱帯〜温帯外洋に広く分布し、日本では房総半島以南〜沖縄にかけて黒潮域を中心に見られます。幼魚は夏〜秋に流れ藻とともに本州沿岸へ現れ、成長すると沖合や陸棚縁辺部に移動します。*1*2

特徴・雑学

カンパチの幼魚は光沢のある黄緑色をしており、5本から6本の暗色の横縞模様があります。 成長と共に体の縞模様は消えるものの、眼を通る斜めの暗色縞模様は残ります。 漢字で「間八」と書く名前は、その斜め縞模様が前から見た時に、漢字の「八」の字に見えることが由来とされています。*1

【生活史】
産卵は主に春(2〜4月)に黒潮沿いの沿岸部で行われ、浮性卵はおよそ1日で孵化します。 孵化後しばらくは表層を浮遊し、全長3〜4cmに達する頃には本映像のように流れ藻や流木に付いて生活します。 やがて遊泳力が高まると漂流物から離れ、岩礁域や人工漁礁に集まり、成長に伴い中層〜沖合へ移ります。
産卵から成長までの間に潮に乗って移動をする生活を送りますが、成長した個体群が元の場所(産卵場所)に「戻る」という確証は得られていません。 カンパチは潮に乗って成長しながら拡散し、それぞれの海域で生活すると考えられています。*2
15年ほど生きるという報告がある他、全長190センチ80キロのカンパチの採取例があります。*3

【養殖】
日本での本格的なカンパチ養殖は1970年代後半〜1980年代に加速しました。 1980年代に中国・東シナ海・南シナ海で採捕された天然種苗(稚魚)の輸入が始まり、安定的な稚魚供給が可能になったことで産地が拡大しました。*4*5
現在でも国内の養殖用種苗は9割以上が天然採捕由来(中国産を含む)とされます。 将来の資源保護と供給の安定化のため、人工種苗の生産技術向上と完全養殖の比率拡大が進められています。*6*7*8

近年の養殖カンパチの国内生産は概ね2.5〜3万トン規模で推移し、九州地域が主産地です。 とくに鹿児島県は長年にわたり上位の生産を維持しており、行政資料の統計でもブリ類と並ぶ主要養殖魚として扱われています。

[令和5年の養殖カンパチの水揚げ量] *9
鹿児島県14,803トン、愛媛県2,389トン、宮崎県2,033トン、香川県1,461トン、大分県1,125トン、熊本県363トン、徳島県344トン、長崎県178トン

【地方名・ブランド】
カンハ→アカブリ・カンハア・カンハチ(伊豆)*10、ヒイラギ(石川/金沢)、ハタハタ(石川/宇出津)*11、 アカバラ・アカバナ・ソージ・アカバナソージ・ネリ・ネル・ネイゴ[幼魚]・ネリゴ[幼魚](鹿児島)*12、 アカハネ・アカバナ[幼魚](山口)*13、ウキムル(沖縄)*14

地域の漁協や自治体では、養殖カンパチのブランド化が進められており、鹿児島県に多くあります。
「海の桜勘」垂水かんぱち(鹿児島県垂水市)*15、かのやカンパチ(鹿児島県鹿屋市)*16、いぶすき菜の花カンパチ(鹿児島県指宿市)*17、 ねじめ黄金カンパチ(鹿児島県大隅町根占)*18。

参考動画:カンパチ


参考動画:ホンソメワケベラに掃除されるカンパチ


参考動画:ヒレナガカンパチ

食・利用

地方名が多数あることからもわかるように、古くから各地で食用とされてきた高級魚です。 旬は一般に秋〜冬にかけて脂がのり、刺身・寿司・しゃぶしゃぶ・照り焼き・塩焼き・煮付け・西京焼きなど幅広い料理に向きます。 火を通しても身質が締まりやすく、洋風ではソテーやポワレ、ブイヤベースなどでも美味です。

毒・危険性

有毒棘や毒腺はありませんが、背鰭の棘条やエラ蓋の縁は鋭く、取り扱い時にケガの恐れがあります。熱帯・亜熱帯の一部海域では大型個体で**シガテラ中毒**が問題となる地域も知られますが、国内一般流通では稀です。※寄生虫についての記載は省略します。

参考資料

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