カスザメ|砂に潜る

Squatina japonica

概要

撮影地: 静岡県伊東市 水深10m

分類・分布

脊椎動物亜門 > 軟骨魚綱 > カスザメ目 > カスザメ科 > カスザメ属 > カスザメ

北海道以南、シナ海

特徴・雑学

カスザメは平たい体を持ち砂地に伏せていることが多く、一見するとエイのようですが、鰓孔が体側に位置するサメの仲間です。 本映像は、カスザメが波状に運動して砂地に埋没する行動を捉えた希少な水中映像です。

英語で「エンジェルシャーク」と呼ばれるカスザメは、その独特な体形と動きで知られています。
平坦な体は砂底に身を潜めやすくするためで、魚や甲殻類が近づくのをじっと待ち構える待ち伏せ型の捕食者です。 夜行性で、昼間はほとんど動かず、体を砂に埋めて過ごします。

砂に潜る行動は、体を波打たせるように動かすことで掘り進めます。 巻き上がった砂は背面を覆い隠し、最終的には目と噴水孔だけを残して完全に姿を消します。
油断して通りかかった魚が目の前を横切ると、カスザメは1/100秒と言われる高速で飛び出し、吸い込むように獲物を捕らえます(*1)。

背面は細かいヒョウ柄でザラザラした質感を持ち、口のには短いひげがあります。 目は小さいうえに巧妙にカムフラージュされていて目立ちません。目のすぐ後ろには三日月形に開いた噴水孔があり、目より噴水孔の方が目立ちます。

【コロザメとの違い】
コロザメとよく似ていますが、コロザメでは左右の目の間隔よりも左右の噴水孔の間隔の方が短いという特徴があります。 カスザメでは目よりも噴水孔の間隔の方が長くなります。
また、胸鰭の外側の角度が90度から100度ならカスザメで、120度前後の鈍角ならコロザメ。カスザメには背中の中心線に棘がありますが、コロザメには無い。 という違いがあります*2)。

【胎生】
雌は体長80センチで成熟するとみられます。卵胎生で、12月から4月に胎仔を産むとされます。
卵胎生で胎盤は無く、2尾~10尾の胎仔は卵黄で育ちます。 妊娠期間は不明とされますが、10ヶ月~1年間であろうと推測されています(*1)。 出産時期もわかっていませんが、冬から春に出産するであろうと考えられ、毎年ではなく1年おき、または3年に1回と考えられています。

参考動画:体側にあるカスザメの鰓孔


▶ 「カスザメの鰓孔」の詳細ページを見る

食・利用

サメの中では一番おいしいという情報が多くありますが、一般的な市場流通は少なく珍味として扱われるようです。 ムニエルや煮付け(*3)、唐揚げなどで美味しいという情報がありますが、漁獲対象としての重要性は高くありません。
小田原の練り物加工業者による試験では、独特の匂いのあるシュモクザメやアオザメとは違って臭みは無く、そのまま加工が可能だったという記述があります(*4)。

毒・危険性

カスザメ自体に毒はありません。基本的には大人しいサメですが、万が一咬まれた場合は、意外と鋭い歯を持つため怪我をする可能性があります。 背中の中心の棘も小さいながら鋭く尖ります。
砂に潜んでいる状態から、俊敏に大きく反り返って獲物を飲み込む様子が観察された例があります。

参考資料

← トップページに戻る
お問い合わせはこちら