ラッパウニ|腺嚢叉棘の毒

Toxopneustes pileolus

概要

ラッパウニ:Toxopneustes pileolus (Lamarck, 1816)

撮影地:静岡県伊東市

分類・分布

棘皮動物門 > ウニ綱 > Camarodonta目 > ラッパウニ科 > ラッパウニ属 > ラッパウニ

房総半島、相模湾以南、インド-西太平洋の潮間帯~潮下帯に棲息します。

特徴・雑学

殻径10cm前後の中型のウニです。先が尖っていない棘は短く太く、ラッパ状に開く腺嚢叉棘(globiferous pedicellariae)が密生しているため目立ちません。
管足を使って小石や貝殻、海藻など周囲のものを体に付けていることが多く、ウニには見えないほど全身を覆った個体も見かけます。 これはカムフラージュのためであったり、紫外線から身を守る傘のような役割だと考えられています(*1*2)。

腺嚢叉棘の先端は3枚で構成される「顎器官」があり、顎の先端には鋭い歯があります。 開いているとラッパのように見えますが、刺激を感じると傘が畳まれるように閉じて触れた物体に噛みつきます。 ダイバーが触れた時に手に付く丸い物体は、この腺嚢叉棘の顎器官です。
腺嚢叉棘には毒腺があり、顎器官先端の歯に繋がっています。 毒は噛みついた相手に放出されますが、顎器官が閉じても必ずしも毒が放出されるわけではなく、暴発を防ぐための機構があると考えられています(*3)。 少なくとも、触れた物体に顎部が張り付くことだけでも身を守る行動になっているものと思われます。

毒・危険性

ラッパウニはペディトキシン(peditoxin)というタンパク質毒を持ちます。
動物実験によるペディトキシン投与では、基礎体温の著しい低下、鎮静・麻酔性昏睡、筋弛緩を引き起こすことが観察されています(*4)。 毒の成分は強いものの、顎器官先端の歯はとても小さいため、手のひらなどの皮膚の厚い部分では貫通しません。 また、毒の強度はラッパウニ自体の個体差、季節による変化、腺嚢叉棘ごとの差があると考えられ、 噛むと同時に毒が放出されるとは限らないということもあり(*6)、人間への被害は限定的と考えられています。
毒成分研究資料では「発赤や腫れを生じる」とあります(*7)。 沖縄県の報告(*8)で、ラッパウニによる被害例が少数ありますが重症例には無く、発赤や腫れの部類かと思われます。
ただし、触れる部位や個人差により症状は異なりますので、素手で触れたり素肌を露出して泳がないようにした方が良いでしょう(*5)。

食・利用

食用とはされていません。

参考動画:ラッパウニの放精

参考動画:ラッパウニに寄生するゼブラガニ

▶ ゼブラガニの詳細ページを見る

参考資料

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