概要
ラッパウニ:Toxopneustes pileolus (Lamarck, 1816)
撮影地:静岡県伊東市
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 長さ:3分6秒
- サイズ:865MB
- (SAMPLE動画は1280x720です)
分類・分布
棘皮動物門 > ウニ綱 > Camarodonta目 > ラッパウニ科 > ラッパウニ属 > ラッパウニ
房総半島、相模湾以南、インド-西太平洋の潮間帯~潮下帯に棲息します。
特徴・雑学
殻径10cm前後の中型のウニです。先が尖っていない棘は短く太く、ラッパ状に開く腺嚢叉棘(globiferous pedicellariae)が密生しているため目立ちません。
管足を使って小石や貝殻、海藻など周囲のものを体に付けていることが多く、ウニには見えないほど全身を覆った個体も見かけます。
これはカムフラージュのためであったり、紫外線から身を守る傘のような役割だと考えられています(*1*2)。
腺嚢叉棘の先端は3枚で構成される「顎器官」があり、顎の先端には鋭い歯があります。
開いているとラッパのように見えますが、刺激を感じると傘が畳まれるように閉じて触れた物体に噛みつきます。
ダイバーが触れた時に手に付く丸い物体は、この腺嚢叉棘の顎器官です。
腺嚢叉棘には毒腺があり、顎器官先端の歯に繋がっています。
毒は噛みついた相手に放出されますが、顎器官が閉じても必ずしも毒が放出されるわけではなく、暴発を防ぐための機構があると考えられています(*3)。
少なくとも、触れた物体に顎部が張り付くことだけでも身を守る行動になっているものと思われます。
毒・危険性
ラッパウニはペディトキシン(peditoxin)というタンパク質毒を持ちます。
動物実験によるペディトキシン投与では、基礎体温の著しい低下、鎮静・麻酔性昏睡、筋弛緩を引き起こすことが観察されています(*4)。
毒の成分は強いものの、顎器官先端の歯はとても小さいため、手のひらなどの皮膚の厚い部分では貫通しません。
また、毒の強度はラッパウニ自体の個体差、季節による変化、腺嚢叉棘ごとの差があると考えられ、
噛むと同時に毒が放出されるとは限らないということもあり(*6)、人間への被害は限定的と考えられています。
毒成分研究資料では「発赤や腫れを生じる」とあります(*7)。
沖縄県の報告(*8)で、ラッパウニによる被害例が少数ありますが重症例には無く、発赤や腫れの部類かと思われます。
ただし、触れる部位や個人差により症状は異なりますので、素手で触れたり素肌を露出して泳がないようにした方が良いでしょう(*5)。
食・利用
食用とはされていません。
参考動画:ラッパウニの放精
参考動画:ラッパウニに寄生するゼブラガニ
参考資料
- JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - 原色検索 日本海岸動物図鑑Ⅱ 保育社 西村三郎編著
- 1)Tool Use by Four Species of Indo-Pacific Sea Urchins
(インド太平洋域に生息する4種のウニによる道具使用) Glyn A. Barrett, Dominic Revell, Lucy Harding, Ian Mills, Axelle Jorcin, Klaus M. Stiefel
Journal of Marine Science and Engineering (JMSE), 2019, Vol. 7, Issue 3, Article 69.
▶ 読む - *2)UV radiation influences covering behaviour in the urchin Lytechinus variegatus.
(紫外線がウニ Lytechinus variegatus の被覆行動に与える影響)
Jessica E. Sigg, Karena M. Lloyd-Knight, Jean Geary Boal
Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom, Vol. 87, Issue 5, October 2007, pp. 1257-1261.
▶ 見る - *3)Prickly Defenders: A Review of Venomous Sea Urchins (Echinoidea).
(有毒ウニ類の総説 ― 棘による防御と毒の多様性) Sina Ehlert-Flaskämper, Cherie A. Motti, Richard J. Harris
Marine Drugs, 2025, Vol. 23, Issue 6, Article 253.
▶ 見る - *4)Purification and properties of peditoxin and the structure of its prosthetic group, pedoxin, from the sea urchin Toxopneustes pileolus (Lamarck)
(ウニ Toxopneustes pileolus(ラッパウニ)から得られたペディトキシンの精製と性質、およびその補欠分子族ペドキシンの構造)
S. Kuwabara
Journal of Biological Chemistry, 1994 Oct 28; 269(43):26734-26738.
▶ 見る - *5)ラッパウニ(生態・危険性の解説)
黒潮実感センター Web図鑑
▶ 見る - *6)Seasonal changes in contractile activity of a toxic substance from the pedicellariae of the sea urchin Toxopneustes pileolus
(ラッパウニ腺嚢叉棘由来毒性物質の収縮活性における季節変動) Akira Kimura, Hideyuki Nakagawa, Hiromi Hayashi, Koichi Endo
Toxicon 22 (3) 353-358, 1984. DOI:10.1016/0041-0101(84)90079-5
▶ 見る - *7)ラッパウニの大型叉棘に由来する生理活性物質の多様性について
江戸 梢、佐藤 静香、酒井 仁美、中川 秀幸
一般社団法人日本家政学会 研究発表要旨集 第64回大会(2012)
▶ 見る - *8)沖縄県における2019年の海洋危険生物刺咬症被害の疫学調査
安座間安仙・福地斉志・喜屋武向子
沖縄県衛生環境研究所報 第54号(2020)
▶ 見る