ソウシハギ|食べない方がいい魚

Aluterus scriptus (Osbeck, 1765)

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概要

ソウシハギ・Aluterus scriptus (Osbeck, 1765)

撮影地:静岡県伊東市

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > フグ目 > カワハギ科 > ウスバハギ属 > ソウシハギ

本州中部以南、世界の暖海に広く分布。
稚魚や若魚は黒潮などの海流に乗って、伊豆半島や時には東北南部まで漂着・来遊します。

特徴・雑学

【形態と特徴】
体は包丁の刃のように非常に側扁で薄く、やや長い吻をもつ独特の姿をしています。 体表には青い細線や斑点が散らばり、鮮やかで派手な体色をしています。

【生息域と生態】
内湾のサンゴ礁や岩礁域に生息し、水面から水深20m前後が主な活動域ですが、最大で水深120mからの報告もあります。*1
暖かい海域に広く分布し、幼魚は流れ藻や流木など水面を漂う物体の周囲で群れながら生活することが知られています。 成長すると水面を離れ、沿岸のサンゴ礁や岩礁域に定着します。
最大で全長110cmに達する大型魚で(*1)、黒潮などの潮流により東海、関東、東北沿岸にも季節的に漂着することがあり(*9.10)、「漂流型」の魚として知られます。 ただし、冬季に水温の下がる海域で50cmを超える成魚が観察されることは稀です。
食性は雑食性で、海藻や藻類、クラゲ、イソギンチャク、ヒドロ虫など、さまざまな生物を摂取します。

【繁殖様式】
国外の観察例によると、繁殖期には1尾の雄が2~5尾の雌を伴って行動することが報告されています。 産卵は底質に付着する底生卵型で、ふ化後の仔魚は水面付近に移動し、流れ藻などに付いて漂う浮遊生活を送るとされています。*2

【毒性】
ソウシハギは、特に肝臓や消化管などの内臓にパリトキシン様毒を蓄積する可能性があることが知られています。 摂取によって中毒の危険があるため、食用には注意が必要です。

食・利用

沖縄では食用として売られている例が紹介されていますが、内臓毒のリスクから一般的な食用は推奨されません。 とくに家庭や素人による処理は大変危険です。

毒・危険性

【毒の由来(蓄積)】
パリトキシンは本来はサンゴや渦鞭毛藻類に由来するとされ、食物連鎖を通じて魚の内臓に蓄積します。 ソウシハギでは肝臓・消化管で高濃度となる報告があり、皮膚や筋肉で検出された例もあります。*3

【危険性(フグ毒との比較)】
パリトキシン様毒は、自然界に存在する毒の中でも極めて強力で、構造が複雑な海洋性毒素の一つです。 加熱や冷凍によっても無毒化することはなく、国内の複数の自治体が「ソウシハギは食べないで」と注意喚起を行っています。*6.7.8

一方で、日本の公的な資料によると、ソウシハギが原因と特定された人の死亡例はこれまで報告されていません。 また、一部の研究では、調査対象となった複数の個体すべてから毒成分が検出されなかったとされ、全ての個体が有毒というわけではないようです。*4

しかしながら、パリトキシン様毒による中毒や死亡事例は、アオブダイやウミスズメなどで報告されており(*5)、食用とするリスクは非常に高いと理解すべきです。
パリトキシンは、フグ毒(テトロドトキシン)よりもはるかに強い毒性を示すとされ、動物実験ではテトロドトキシンの数十倍の毒性を示すと報告されています。 摂取すると Na⁺/K⁺ポンプの機能が阻害され、筋肉痛や呼吸困難、けいれんなどの重篤な症状を引き起こす可能性があります。

【毒の部位】
最も危険な部位は内臓とされています。身のみでは未検出とする例もある一方、完全に保証されたものではなく、全身を有毒魚として扱うのが基本です。

【二次的被害と廃棄】
処理した内臓の不適切廃棄は、ペットや野生動物(カラス等)による【 誤食→中毒→死亡 】の二次被害につながります。 フグでは有毒部位を鍵付き容器で保管し、焼却等で処分する運用が各地の条例・通知で定められています。
ソウシハギも同様に、食べないこと、やむを得ず扱う場合は厳格な廃棄管理を徹底するべきです。 釣りあげたソウシハギを陸上で放置することも好ましくありません。

関連動画:ソウシハギ稚魚の群れ(静岡県伊東市 10月)

▶ ソウシハギ稚魚の詳細ページを見る

参考資料

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