ウツボの歯|捕食の進化

Gymnothorax kidako

概要

撮影地: 静岡県伊東市 水深7m

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > ウナギ目 > ウツボ科 > ウツボ属 > ウツボ

本州中部以南、フィリピン

特徴・雑学

ウツボ属の歯は、上顎の中央に縦に並んだ歯列があったり、二重の歯列になっていたりと、獲物をがっちりと捕らえるための構造になっています。
鰓は、一般的な魚類のように鰓蓋はなく穴のみです。開閉することで海水を取り込むということができませんので、口を開けて動かすことで、より多くの海水を取り込もうとします。 ウツボが口を開けているのは威嚇ではなく、呼吸をするためです。
また、一般的な魚が吸い込むことで獲物を食道へ送る「吸引摂餌」を行うのに対し、ウツボは喉の構造上、吸引をすることができません。 そのため、第二の顎と呼ばれる「咽頭顎」を喉の奥から出し、鋭い歯で捕らえた獲物を、喉の奥から出てきた咽頭顎で掴んで食道へと送り込みます。 ウツボ以外の多くの魚にも咽頭顎はありますが、「可動して掴む」という構造はウツボだけです。

ウツボには鱗がなく、胸ビレも腹ビレもありません。浮袋も味わうための舌も無いので下等な魚類に見えるかもしれませんが、 それは無駄を削ぎ落とし、獲物を狙うことに特化して進化した結果ともいえます。

参考動画:ウツボの咽頭顎の動き(RitaS. Mehta PeterC. Wainwright)

食・利用

食べない魚のイメージがあるウツボですが、高知、紀伊、伊豆、房総では昔からウツボを食用とし、干物がポピュラーです。
高知では、ウツボは高級魚となっており、たたきをはじめ、唐揚げ、煮こごりなど、様々な調理方法で食されます。ハモ同様に小骨が多く、調理人の腕が試される魚とされています。

ウツボ漁は、アナゴ漁と同じように海中に筒を仕掛けて漁獲します。 仕掛けを揚げてみてウツボではなくアナゴが入っていると「なんだアナゴか」と漁師はがっかりするほど、ウツボの価値が高い地域です。

皮まで美味しい魚とされますが、なめして革製品としても活用されます。

毒・危険性

ウツボに毒はありませんが、別種のドクウツボはシガテラを蓄積している場合があります。
歯はカッターナイフの様に切れ味がよく、噛んだ後に引き裂くような行動をするため、傷が大きくなりがちです。ただし、ウツボから攻撃を仕掛けてくることは無く、 人間が攻撃しなければ安全な魚です。怖いからといって追い払うような動作をするのは、逆に危険です。

呼び名

ウージ(沖縄)・キダカ(鹿児島)・ウナダ(静岡)・キツネ(新潟、和歌山)・ドロボオ(因島)・ナギッチョウ(山口)・サジ(富山)ナダ、ナマダ(三浦、房総)

参考資料

← 一覧ページに戻る
お問い合わせはこちら